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トヨタ 1兆円の融資枠を要請

浅川です。

白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。

トヨタ 1兆円の融資枠を要請

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トヨタ 1兆円の融資枠を要請

 

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> トヨタ自動車が三井住友銀行と三菱UFJ銀行に対し、計1兆円規模のコミットメントライン(融資枠)の設定を要請したことが27日、明らかになった。(2020年3月28日付『日本経済新聞』より一部引用)

 

今回は、太田光則さんのリクエストをお届けします。太田さん、ありがとうございます。

 

 

■トヨタが融資枠を設定した理由は?

 

はじめに、トヨタと銀行2社がどのような関係になっているかを確認します。

 

まず、銀行にお金を預けている「預金者」の人たちがいます。そして、トヨタがあります。今回トヨタが融資額を要請したのは、次の2つの銀行です。

 

・三菱UFJ銀行

・三井住友銀行

 

この2社に対し、トヨタが1兆円の融資枠を要請した、というニュースになっています。

 

では、「なぜトヨタほどの超優良企業が、1兆円の融資枠を要請する必要があるのか?」と思われるあるかもしれません。そこから考えていきましょう。

 

まず、「トヨタは、全世界で1年間の売上はどれくらいあるか?」を考えます。トヨタの売上は、年間で30兆円です。これは1年なので単純に12カ月で割ると、月あたりの平均の売上が出てきます。もちろん実際には「何月の売上は良く、何月の売上は良くない」ということがありますが、あくまでも単純計算で「÷12」をすると、1カ月当たりの平均売上が出てきます。次のような計算です。

 

・30兆円÷12=2兆5千億円:1カ月の平均売上

 

 

次に、「トヨタは今、現預金をいくら持っているのか?」を考えます。トヨタは現預金を3兆7千億円持っています。

 

今回のコロナショックのように、世界経済や日本経済が、短期的とはいえ、ものすごく激しく影響を受けている場面を考えてみましょう。そして、わかりやすさだけを考えて極論として、実際にはあり得ないことですが、例を挙げて説明すると、もし、トヨタの売上がゼロになったら、トヨタほど日本を代表する優良企業でさえ、資金がショートしてしまうことになります。

 

繰り返し言いますが、実際には、全世界のトヨタが「3月、4月の売上はゼロでした」ということはありえませんが、わかりやすく極論で、次のような例をお伝えします。

 

・3月の売上がゼロ

・4月の売上もゼロ

・2カ月間の売上ゼロ:2兆5千億円x 2カ月=5兆円の売上減

 

このように、5兆円の売上が減ることになります。トヨタが持っている現預金は3兆7千億円で、実質、1カ月半の売上分がトヨタの持っている現預金です。ですから、トヨタは本当に日本を代表する優良企業ですが、イメージほどは余裕があるわけではないと言えます。

 

「1年、2年、3年、ずっと売上がなくても、全く問題なし!」というほどは余裕がないのです。万が一、2カ月間、売上がゼロになった場合は、このトヨタでさえ資金がショートする危険性・リスクがあるということを、まず前提として知っておく必要があります。

 

 

■トヨタが融資枠を要請すると、どのような影響に?

 

今回、トヨタが「1兆円の融資枠を要請する」ということは極めて妥当であり、合理的です。しかも、今は、歴史上稀に見る低金利です。お金を借りたとしても、それにつく金利がものすごく低い、といいう時代です。

 

金利は、3%や4%と、借りる相手先により変わります。たとえば、国の日本政策金融公庫であれば、実質「無利子」という状態になっていますので、仮に、今回のようなコロナショックのようなことが起きたとき、念のために1兆円のお金を借りておく、ということは、企業にとって非常に合理的な判断・合理的な行動と言えます。

 

そして、社会全体にとっても、トヨタのような優良企業がお金を借りてくれることは「プラス」になります。なぜ「プラス」なのかと言えば、「信用創造になるから」です。要するに、「社会全体のお金が増える」ということです。

 

預金と貸し出しにより、社会全体のお金がどんどん増え、銀行の信用に基づいてお金が作られることで「信用創造」と言われ、誰かがお金を借りてくれると、その分、社会全体のお金が増えるのです。

 

たとえば、預金者が三菱UFJ銀行と三井住友銀行に「1兆円」を預金しているとします。その時、社会全体のお金は、本当は「1兆円」です。ところがもし、トヨタが「1兆円を借りてくれた」ということになると、預金者の通帳には「1兆円が残ったまま」であり、トヨタの通帳にも「1兆円が記帳される」ことになります。ですから、1兆円が合計2兆円となり、社会全体のお金が増えるのです。

 

実際には、三菱・三井という銀行は、一部のお金を自分たちの銀行に置いておく必要があると決まっているので、1兆円を丸ごと貸すことはできませんが、わかりやすく極論で言うならば、「信用創造のイメージ」は、次のようになります。

 

・1兆円、預金をしてもらう

・誰かに1兆円を貸す

・社会全体が「1兆円+1兆円=2兆円」に増える

 

このように、「借金をしてくれる企業が社会全体を豊かにしている」ということが、経済の基本になります。だから、経済の循環が良くない時というのは、借金が少ない時だと言えます。次のようになります。

 

・誰も借金しない

・社会全体のお金が増えない

・景気がぐるぐる循環しにくくなる

 

 

反対に、誰かが積極的に借金をしてくれると、次のようになります。

 

・誰かが積極的に借金をする

・社会全体のお金が「信用創造」により増える

・景気の従感が良くなる

 

日本は、1991年にバブルが崩壊するまでは、国民みんなが借金をよくしていました。一番わかりやすいのは、マイホーム・ローンという借金です。当時の金利は15%ぐらいでした。

 

それほどの高い金利だったとしても、日本国民はたとえば「35歳になったから」というタイミングでマイホーム・ローンという借金をして、マイホームを建てて、、、というように、日本国民が積極的に借金をしていたのです。そのたびに銀行から貸し出しが行われ、社会全体のお金が増えていきました。

 

ところが今はバブルが崩壊をして、「もう借金は良くない」「借金ですごく大変な目に遭った」という企業や個人がたくさんいるために「借金はとにかく良くない!」という考え方・固定観念が生まれています。その結果、家計も企業も、極力、借金をしなくなっていきました。

 

それにより、社会全体で信用創造が働かなくなり、社会全体のお金が増えなくなったのです。それから「失われた25年」と言われ、景気が良くなくなりました。

 

 

■今回のニュースから学べることは?

 

今回のニュースでは、「誰が借りられるのか?」ということも大事です。返せない企業が借りるのは、社会にとって良くないことです。あくまでも、返すことができるだけの優良企業、優良個人がお金を借りるというのはすごく良い、ということです。

 

そうした時に、トヨタという、まさに日本を代表する優良企業が、1兆円という大きなお金を借りるという要請をしたことは、企業にとっても合理的ですし、社会全体にとっても良いことだと言えます。

 

今回のこのニュースから私たちが学べることは、「借金=悪」という固定観念を外すことで、初めて物事を中立で見ることができる、ということです。借金は、預金と貸し出しにより、社会のお金が増えていくという「信用創造」の働きからすると、善にもなり得ると言えます。

 

このとき、「誰が借りるか」が非常に大切になってきます。返せない人に貸してしまうのは良くないですし、返せない人が借りる、というのも良くないですが、ちゃんと返してくれるような企業や個人が相手だった場合は、借金は「信用創造」により、社会全体のお金を増やしていくので、善にもなりえます。それを今回のニュースから学べるといいなと感じています。

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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。

 

浅川淑子(あさかわよしこ)

 

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