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ソフトバンクG 資産最大4.5兆円売却、自社株買い2兆円

浅川です。

白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。

ソフトバンクG 資産最大4.5兆円売却、自社株買い2兆円

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ソフトバンクG 資産最大4.5兆円売却、自社株買い2兆円

 

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> ソフトバンクグループ(SBG)は23日、自己株式取得と負債削減に向けて4.5兆円の資産を売却または資金化すると発表した。中国・アリババ集団や国内通信子会社ソフトバンクなど投資先の上場株が主な対象になるとみられる。(2020年3月23日付『日本経済新聞』より一部引用)

 

 

■ソフトバンクグループはなぜ資産を売却?

 

ソフトバンクグループは持ち株会社、つまり、株を持っている会社です。いわゆる、何か製品を作る「製造」や、見込み客を集める「集客」、もしくは何か商品・サービスを売る「販売」という実業はやっていないグループです。

 

あくまでも持ち株会社で、「アリリババ株を保有してます」や、「ソフトバンク株式会社の株を保有しています」、「アメリカの通信スプリットの株を保有しています」そのほかにもいくつかの株を保有し、「ソフトバンクビジョンファンドの株を保有しています」という「株を保有している持ち株会社」になります。

 

ソフトバンクグループは、コロナショックの影響をすごく大きく受けました。事業をやっている「アリババ」や「ソフトバンク株式会社」、「スプリント」よりも、親会社のソフトバンクグループの方が実際に影響を受け、一番下がった時で時価総額が半額近くまで下がったということがありました。

 

そのために、ソフトバンクグループは資産を最大4.5兆円売却しました。

 

あくまでも2020年2月決算発表時点ですが、ソフトバンクグループの株の合計は31兆円でした。つまり、ソフトバンクグループの資産31兆円というのは、持っている株の合計の31兆円となります。

 

この31兆円の株から構成されている資産のうち4.5兆円を売却し、その「4.5兆円のうち2兆円は自社株買いに使います」という発表です。31兆円のうち4.5兆円を売却し、得ることができた資金から2兆円はソフトバンクグループという自社の株を買い、そして残りの2.5兆円は負債の返済にあてる、というニュースです。

 

 

■「自社株買い」をするとどうなる?

 

ソフトバンクグループは2兆円の自社株買いによって、株の価値が上がることになります。要するに、ソフトバンクグループの株を売らないでずっと持ち続けている既存の株主が得をする、ということです。株主の価値が上昇するということだからです。

 

ではなぜ、「自社株買いをすると株主の価値が上がるのか?」については、単純に「全体のパイが小さくなるから」です。

 

すごくわかりやすい例として、まず「株主価値」を適当な数字で考えてみると、次のようになります。

 

・A社の発行株式総数:20兆円
・自分:A社の株式総数の10%を保有=2兆円の株を保有
・自分の株主価値=2兆円

 

企業が自社株買いをした後、買った株をどうするのかは企業が決めることができます。ソフトバンクグループは、自分たちが市場からソフトバンクグループの株を自社株買いしました。それで「買った株を償却する」、つまり簡単に言えば、もう「消してしまう」ということをした場合、結局、発行株式総数が「減る」ことになります。

 

では、「なぜ企業が自社株買いをしたら株主価値が上がるのか?」を説明していきます。今から示す数字はかなり適当な例ですが、次の例を考えてみましょう。ようになります。

 

・B社の発行株式総数:1億円
・自分:B社の株、100万円分を保有=B社の株式総数の1%を保有

・B社:5,000万円分、自社株買いをした

・B社:自社株買いをした株5,000万円分を償却(消した)

・B社の発行株式総数1億円から、B社の償却分5,000万円分が除かれる

・B社の発行株式総数:5,000億円

 

B社が「自社株買いをして償却した」ということになると、簡単に言えば、「発行株式総数が減る」ということになり、今回の例であれば、株式総数は半分になります。

 

でも、「自分」が持っている株は100万円分で変わっていません。ですが、5,000万円のうちの100万円ということになり、株式総数の2%を保有していることになります。「自分」は何もしていません。それでも、今まではその企業の1%分しか持っていなかったのに、2%を持つことができているので、価値が2倍になるのです。

「物の価値」とは希少価値を言うので、「どれほど珍しいかどうか」が経済的な価値になります。

ですから、上の例でも、持っていた100万円の株自体は全く変わっていません。その企業が発行している株の中で、今までは1%分しか持っていなかったのに、2%を持つことができるようになると、経済的価値が2倍になります。

 

要するに、この人の資産は、「企業が自社買いをしてくれたことによって、単純に資産価値が倍になる」ということが起きるのです。それがこの「自社株買いによって株主価値が上昇する」ということです。

 

結局、ソフトバンクグループの株をずっと売らないで持ち続けていた人にとって、ソフトバンクグループが自社株買いをしてくれればしてくれるだけ、自分の資産はどんどん増えていく、と言えます。

 

 

■自社株買いは最善策ではない!?

 

ただし、このやり方は最善ではありません。「自社株買いをして、その企業がその株を償却してくれたら既存株主の価値が上がる」ということは事実です。でも、企業にとってベストのやり方ではありません。

 

なぜかと言えば、株はそもそも、将来上げる収益における「権利」です。ソフトバンクグループがこれから来年、再来年、3年後、4年後、5年後にあげる収益に期待して投じるものが本来の株であり、企業の価値・株式の価値は、その企業が将来あげる価値を、現在の価値に基づいて計算しているものです。

 

・ソフトバンクグループが1年後もこれぐらい利益を出してくれるだろう
・2年後もこれぐらい利益を出してくれるだろう、、
・3年後もこれくらい利益を出してくれるだろう、、、
・ずーっとこれから、10年、20年、30年でこれぐらい利益を出してくれるだろう、、、、

 

それを現在の価値にして出す、というのが時価総額という考え方です。ですから、本当に株主の価値を上げるということを考えると、「いかにソフトバンクグループが、より投資会社として大きな収益を上げていくか?」ということが大切です。

 

ソフトバンクグループからすると、「自分たちが持っている資産を売り、自社株を買う」というのはベストのやり方ではありません。理想的なやり方は次のような形です。

 

・「この企業は成長が鈍化して成熟している」という理由で持っている株を売る

・売った株の資金がソフトバンクグループに入る

・入った株を今から成長する企業に「再投資」する

 

 

これが本来あるべき事業の姿であり、本来あるべき投資会社・持ち株会社の姿です。つまり、次のようにも言えます。

 

・「この企業は成長企業だ」という理由で株を持ち続ける

・「この企業はもう成長が鈍化して成熟し始めている」
・「これから大きな成長はなかなか期待することができない」

・今まで持ってたいた株を売却する

・これから成長する企業に再投資する

・さらに大きな収益を上げる

 

これがベストの考え方・ベストのやり方です。同じ株式価値・株主価値が上がるとしても、自社の株を買って既存の株主の価値を上げるというのは、ベストのやり方ではありません。

 

やはり、このコロナショックの影響でソフトバンクグループの時価総額は、本当に一時期ではありましたが、半額近くまで下がったというのは、企業としてはかなり痛かったのだろうと感じます。

ですから、ベストではないにしても、今回の方法をとることにより、なんとかその株主価値を上げ、時価総額を上に戻そうとしたのではないかと思います。

 

このニュースから私たちが学ぶことができることは、やはり「自社株買い」に関する知識です。

 

・自社株買いをするとなぜ株主価値が上昇するのか?

・それは、既存株主が持っている株式の価値・割合が大きくなるから

 

今回のニュースから、このような知識をあらためて持っていただければいいなと感じています。

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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。

 

浅川淑子(あさかわよしこ)

 

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