社外取締役のメリットと問題点とは?
白坂です、
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社外取締役とは?
>「取引や資本関係がない社外から迎える取締役」
(『大辞林 第三版』より一部引用)
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社外取締役を日本企業で迎え入れることが進んでいます。
資本金5億円以上の大会社は社外取締役の設置を義務づける「会社法」の改正が提案されています。
また、東京証券取引所は上場会社に対して社外取締役:2名以上を求めている動きもあります。
「なぜ、企業に社外取締役の設置を求めるようになったのでしょうか?」
それは、企業による不祥事が発生していることが原因です。
特に、日産の前会長カルロス・ゴーン被告が巨額の役員報酬を隠したとされる事件が大きな契機となりました。
そもそも、
取締役というのは株主の代わりに経営者を取り締まるという役職です。
にも関わらず、内部の取締役では経営者を十分に取り締ることが出来ていないという認識となっています。
内部の取締役が経営者をしっかりと取り締まることが出来ていないのであれば、「会社と人間関係や資金のシガラミのない社外の人間に取り締まらせた方が良いのでは?」という考えで社外取締役の設置が求められるようになっています。実質、アメリカの取締役会の過半数は社外取締役であるという事実もあります。
しかし、
現時点では、日本における社外取締役制度は概して上手くいっている事例が少ないようです。
つまり、既に社外取締役を入れている企業で取締役会が実際に上手く機能している企業が少ないということです。なぜでしょうか?簡単です。
アメリカと日本では企業文化が全然違うから
アメリカの企業というのは悪く言えばドライですが、よく言えば極めて合理的です。
・企業は株主のものである。
・株主が求めているのは企業の利潤最大化である。
・よって、社外取締役の役割は株主のために利潤最大化のために仕事をする
アメリカの社外取締役は経営者と激しい議論をします。
なぜなら、アメリカの社外取締役というは概して自分の会社の創業者だからです。
つまり自立しています。相手企業の経営者からの役員報酬を期待しているわけではなく、30代とか若い時から社外取締役を務めることで経営者としての器を広げることを目的としています。
数年単位での就任や退任は当たり前。
または、任期終了後に競合他社の取締役になることも珍しくありません。
たとえば、今まではグーグルの取締役だったけれど、退任後にフェイスブックの取締役になるということが普通に行われています。
要するに、
悪く言えばドライ、良く言えば合理的なアメリカ人にとって、株式のために利潤最大化を経営者に求める社外取締役という制度は合っているわけです。
ところが、
日本企業の場合は、良く言えば人情的ですが悪く言えば甘いです。
依存しています。
監督官庁から天下り先として企業の社外取締役になる場合もあれば、自分では実際の経営をただの1回もやったことがない大学教授が社外取締役に就任する場合もあります。公務員出身の方は、たとえ、どれほど高度な理論を知っていたとしても、なにせ自分では経営したことがないために全く役に立たない空理空論を主張する場合もあるわけです。
・経営は理論ではなく実際
・経営は理論ではなく実際
・経営は理論ではなく実際
たとえば水泳と同じです。
高度な水泳法を知っている人が世界で一番速く泳げるわけではありません。
「知っていること」と「実際に出来る」ことは相当に違います。
つまり、実際に商品を売ったことがない人が述べるマーケティング理論は机上の空論でしかありません。
そういう理論家が社外取締役に就任した場合、
・社外取締役は大きな空理空論ばかりを主張、
・経営者は、極めて細かい実務ばかりを主張、、、
両者の議論は平行線に終始する場合も多く、時間ばかりかかって一向に前に進まずに時間の無駄を重ねてしまいがちにもなるのです。
日本企業というのは、悪く言えば甘い。しかし良く言えば団結力があります。
意思決定に際して、みんなの合意を得られるまで議論を重ねます。
アメリカ企業と比べて意思決定に時間がかかりますが、しかし、いざ合意が得られた場合は、一致団結した力強い組織行動を取ります。
・短期爆発的な成功を求めているアメリカ企業
・長期堅実的な成功を求めている日本企業
もし日本企業が10年、20年、30年、、、という長期での着実な成功を求めているのであれば、社外取締役制度というのは必ずしも良いとも言えません。なぜなら、株主が短期的な利益を求める中で、経営者が長期的な成長を求めているのであれば、短期的な業績を無視してでも将来の成長のための組織行動を取らなければならない場合もあるからです。
一番、分かりやすいのは社員という人材育成です。
人の本当の実力というのは、そんなに短期間では変わりません。
決算書の数字を短期的に変えることは可能だったとしても、その人1人が持っている本当の実力を短期で変えることは出来ません。それは、昨日まで全く泳げなかった人が、いざ世界最高峰の泳法を知ったかと言って、今日からいきなりスイスイ泳げるようには「ならない」のと全く同じです。
人材育成という考え方そのものが長期的。
もし経営者が求めているのが、短期的な企業の成功ではなく長期的な成功であったならば、短期的な業績を無視してでも、社員を雇用して、教育して、、、ということをやる必要も出てきます。
つまり、3か月単位で業績の向上を求める株主の意向を無視した経営を行わざるを得ないこともあるということです。だから、株主の代理人として経営者を取り締まる社外取締役の設置が全ての問題を解決するというほど物事は単純ではないということです。
もちろん、
日本企業の中には社外取締役制度が上手く機能している企業もあります。
たとえば、ソフトバンク・グループです。ソフトバンク・グループの社外取締役には、ユニクロの柳井正社長や、アリババのジャック・マー前会長なども参画しています。ソフトバンク・グループは、一見、孫正義社長のワンマン企業のように見えながら、実際は、取締役会の中でかなり激しい議論が行われています。参画している社外取締役が実力者ばかりなので、社外取締役の制度が企業統治に十分に役立っているわけです。
まとめます。
・形式だけの社外取締役の設置は無駄。
・社外取締役制度が上手く機能するのは、企業の理念実現やビジョン達成に向けて真剣な議論を経営者と対等に議論できる本当の実力者が社外取締役として入っている場合のみ。
なので、
もし投資家という観点から企業を分析する場合は、単に「社外取締役」が参加しているか・どうかを見るだけでは不十分だと言えます。
「誰が社外取締役として参画しているか?」
という「人」そのものを冷徹に観察する必要があります。
もし、経営者に対して「言うべきを言える」ような相当な人物が社外取締役として参画している場合、その企業は社外取締役制度が活きている可能性が高いです。投資先として検討できるプラス材料を1つ持っていると評価することが出来ると思います。
以上です。
貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
白坂慎太郎
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