【溶ける】感想 井川意高(いかわもとたか)さんの本レビュー

白坂です、

 

溶ける

 

個人的に大学の卒業論文が『賭博罪』だったこともあって、興味深く拝読しました。

 

実は、ヨーロッパやアメリカなど先進国では、個人が自分のお金を賭ける「賭博」は犯罪になりません。なぜなら、「経済活動の自由」という基本的人権があるから。「本人が本人のお金をどのように使うか?」は基本的に自由。だから、本人のお金であれば、たとえ賭けても問題ない、、、が多くの先進国の状況。

 

一方、

 

日本では「賭博」は罪になります。理由は「勤労の義務」。日本は古来より汗水垂らして真面目に働くべき、、、という文化を持っているから。賭博は「勤労の価値」を低下させ、「早く・楽に・簡単に儲かりそう」という射幸(しゃこう)心を煽るものとして刑法で禁止されています。

 

もっとも、

 

刑法そのものが戦前の明治時代に作られたものであり、刑法の「賭博罪」は法曹界でも、「時代に合わない」という解釈になりつつあります。

 

たとえば、競馬・競輪・競艇などの公営競技が行われていたり、日本全国にパチンコ店が並んでいたり、日本でも「カジノを認めては?」という国会議論が行われていたりしているくらい時代は変わり続けています。

 

だからと言って、刑法の賭博罪そのものは廃止されていません。なので、賭博は厳密には違法。逮捕されたり起訴されたりすることがほとんどなくなっている、、、という実情と法律の間に差があるまま放置されてしまっている条文の1つです。

 

なので、

著者の井川さんも海外のシンガポールで賭博を行っていたもの、賭博罪で逮捕・起訴されたわけではありませんでした。井川さんの罪は

 

特別背任罪

 

会社のお金を借りて賭博を行っていたことが、会社の所有者である株主に対しての裏切り行為に当たるという特別背任で逮捕・起訴されました。そして、実刑6年の判決。

 

井川さんは大王製紙の創業者の孫。

祖父・父・ご本人と創業家としては3代目の大王製紙社長でした。

そして、当時、グループ会社の90%の株を保有していました。

 

筆頭株主の創業家でありグループ会社の社長として、子会社から借金をした上で、賭博を行っていた。そして、

 

106億8000万円を溶かした

 

これほど大きな金額を負けることが出来たのも、それだけの資金を子会社から借りることが出来たという、かなり特殊な状況の人だったから。106億円も、いざとなれば、会社の株を売って返済できる金額だった。

 

なので、

井川さんがギャンブルで106億負けたということに関して、金額面で参考になるところは、正直、ありません。なぜなら、99.99%以上の人は、106億も借金をすること自体が出来ないから、です。

 

では、

もし、この本から私たちが何か学びを得ることが出来るとしたら、、、それは、

 

「なぜ、そこまでギャンブルの底なし沼に落ちたのか?」

 

という【キッカケ】。

 

井川さんの人生は、ギャンブルを通じて大きく「変わりました」。

株を売って借金を完済することは出来たものの、ご本人は実刑6年の判決を受けました。そして、ご本人はもちろん、お父様や弟さんも、大王製紙から離れざるを得なくなりました。

 

人生は「たまたま・偶然・何となく」変わることはありません。

東大卒で、しかも上場企業の社長、しかも生まれながらのギャンブル好きとまでは言えなかった井川さんがギャンブルで全てを失うことになった【キッカケ】は、

 

人との【出会い】

 

ジャンケットと呼ばれる職業の人物に出会ったから。

そして、その人と付き合い始めたことから、井川さんの人生は大きく変わっていきます。そして、最終的に全てを失うことになっていきます。

 

ジャンケットとは、「カジノ」と「大金持ち」の仲介役。

ジャンケットにお金を渡すのはカジノなので、ジャンケットにとっての直接の顧客はカジノ。ただし、ジャンケットが奉仕するのは「大金持ち」。飛行機やホテルの手配などはもちろん、

 

カジノで負けた場合の借金の手配までする

 

ジャンケットは「大金持ち」の状況をよく知っているがゆえに、「大金持ち」がどれくらいまで借金が出来るのかを把握しています。だから、「大金持ち」が「カジノ」で負けた場合、たとえ「大金持ち」の手持ち金額がなかったとしても、代わりに借金の手続きをしてくれる。「大金持ち」は掛けで勝負を継続できる。この

 

簡単に借金が出来る状況を作るジャンケットとの【出会い】が井川さんの人生を変えた

 

人生は「たまたま・偶然・何となく」では絶対に変わらない。もし変わるとしたら、今まで出会ったことがない「新しい人」との出会いが必ずある。井川さんにもあった。人生を変える出会いが。ただ、残念ながら、人生を悪い方向へ変える【出会い】だった、、、

 

簡単に借金できる状況というのは、人を決して幸せにしない。

最初は、ちょっとした気持ちから始まった借金だったとしても、借りているうちに感覚が麻痺してしまう。そして、いつしかギャンブラーに

 

一発大逆転を狙わせてしまう

 

 

負ける

借金が膨らむ

一発大逆転を狙う

全てを失ってしまう

 

 

井川さんがやっていたギャンブルは「バカラ」。

確率50:50の典型的なギャンブル。

人間は確率1/2に最も興奮を覚える生き物なので、全てを取り返そうと思って勝負を続けているうちに、全てを失ってしまう。

 

東大卒で大企業の社長でも抵抗できないギャンブルの魔力。

だから、賭博が法律で禁止されている・されていないを超えて、

 

 

借金してまでやっては絶対にいけない

 

 

お金の原則は、余らせて・貯金して・投資する。

貯金あっての投資。貯金によらない投資は上手くいかない。

まして、借金をしてまでの投資は投資ではない。博打。

 

だから、

安易に借金が出来る環境や、借金を勧める人からは全力で離れなければならない。

「バカラ」のような分かりやすいギャンブルはもちろん、FXや株式であったとしても実質的な借金に当たる「信用取引」からは全力で離れなければならない。

 

「借金も活用した方がレバレッジが働いて効率が良い、、、」というのは『机上の空論』。人間は論理の生き物ではない。感情の生き物。借金の額が大きくなれば冷静さを失う。勝ちの後の利益確定が出来なくなる。負けが続いている中での損切りも出来なくなる。勝つまでやると意地になって、最終的には

 

 

全てを失ってしまう

 

 

井川さんだから落ちたのではなく、井川さんでさえ抵抗できなかった『ギャンブルの魔力』。確率50:50のギャンブルはやってはいけない。まして、借金をしてまでやるものではない。法律で禁止されている・されていない、、、を超えて、もし全てを失いたくないのであれば、

 

 

安易に借金が出来る環境や、借金を勧める人からは全力で離れるべき

 

 

あくまで

「貯金を再投資」が原則中の原則。

もし10年・20年・30年、、、と複利で資産を増やしていきたい場合は常に確認し続けておきたい鉄則中の鉄則だと改めて再認識しています。

 

溶ける

 

あなたのとても貴重な時間にて最後までお読みくださり感謝しています。

いつも本当にありがとうございます。

 

白坂慎太郎

 

追伸:

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