Yahoo!とKADOKAWAが業務提携
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
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Yahoo!とKADOKAWAが業務提携
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> ヤフーとKADOKAWAは12日、レジャー施設などのチケット販売で業務提携したと発表した。KADOKAWAが運営する観光情報メディアと連携することで、レジャー施設の情報収集からチケット販売まで一貫したサービスを手がける。(2020年2月12日付『日本経済新聞』より一部引用)
■どのような提携になるのでしょうか?
まず、今回登場する会社について、何の会社であるか抑えておきましょう。
・Yahoo!:検索エンジンで有名な企業
・KADOKAWA:出版で有名な企業
今回、この2社が提携しました。KADOKAWAの事業で一番有名なのは、もちろん「本」です。しかし今回は、KADOKAWAの持っているインターネットのアプリサービスが、Yahoo!と提携するという内容です。つまり、「インターネットの事業とインターネットの事業が提携をする」ということが、今回のニュースになります。具体的には、次のサービスの提携です。
・Yahoo!:「Yahoo!チケット」(イベントのチケットを買えるサービス)
・KADOKAWA:「ウォーカープラス」(イベント情報提供のサービス)
このように「情報を流している」サイト(ウォーカープラス)と「チケットを買える」サイト(Yahoo!チケット)が提携します。すると、利用者にとっては、次のような便利な流れができます。
・「ウォーカープラス」で情報収集をする
↓
・「こういうイベントがあるんだ!」という情報を知る
↓
・「このイベントに参加しよう!」と決める
↓
・「Yahoo!チケット」でチケットを買う
情報収集から購入まで、インターネットで一貫してできるようになります。ですから、消費者にとっては間違いなくプラスのニュースとなります。
■投資家から見ると、今回はどのようなニュースだと考えられるでしょうか?
消費者にとってプラスのニュースでも、投資家にとっては、大したニュースであるとは言えません。
投資家は売上の規模を見るときに、「一番のメイン事業が良くなるかどうか」を非常に大事にしています。KADOKAWAといえば、やはり「出版」です。「ウォーカープラス」という事業をやっていますが、メインの本業がこれからどうなっていくのかが一番大きな視点になります。消費者目線ではプラスですが、だからと言って次のことは別の話です。
・「Yahoo!に投資したくなるか」?
・「KADOKAWAに投資したくなるか」??
出版業界は今、「本を読む人が少ない」ため、衰退傾向にあります。そこでKADOKAWAは「インターネット」という新規事業に多角化しましたが、2019年の決算は赤字でした。ここで足を引っ張ったのは出版ではなく「インターネット」の方です。
赤字の原因になったのは、「ニコニコ動画」です。「ニコニコ動画」はKADOKAWAが出資しています。だから、決算が連結されたときに「ニコニコ動画」の赤字がそのままKADOKAWAの赤字決算になりました。私たち投資家は、数字の大きいところが改善されているかどうかを非常に大事にしています。KADOKAWAを投資対象として「見るか、見ないか」を判断する際に「ニコニコ動画はどうするのか?」を一番気にします。
・本業の出版が(どちらかと言えば)衰退傾向になる
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・本業を立て直そうとする
↓
・「ニコニコ動画」と業務提携し、出資をする
↓
・「ニコニコ動画」が赤字になる
↓
・KADOKAWAも赤字になる
↓
・「ニコニコ動画」が足を引っ張ることに。。。
投資家は、このような流れを見て、本質的な問題解決が行われているかを見ます。今回、ニュースとして取り上げられましたが、投資家としてはあまり判断基準にはならないニュースであるように感じられます。
■KADOKAWAは、これから良くなる見通しはあるのでしょうか?
ビジネスは、良くも悪くも弱肉強食的な点があります。1位は徹底的に伸びますが、2位以下はどうしても厳しくなります。たとえば、動画サービスで1位と言えば「YouTube」です。「YouTube」は今年2020年、YouTubeを撮る人がどんどん増え、見る人もどんどん増えているので、この先も伸びると考えられます。「ニコニコ動画」の比ではありません。そうなると、ニコニコ動画はYouTubeとの競争に負け、この先どんどん厳しくなってしまいます。
完全に勝ち負けが付き始めている状態なので、次のような視聴者が増えない限り、KADOKAWAは厳しい状況です。
・「YouTubeではなく、ニコニコ動画を見たい!」
・「ニコニコ動画の有料会員になり、お金を払ってでもニコニコ動画を見たい!」
今後投資家は、KADOKAWAが「ニコニコ動画を切り離すかどうか」に注目しています。
ニュースのタイトル通りであれば、消費者にとってはプラスの内容ですが、投資家はその内容を重視していません。その事に、今回気づいていただく必要があります。もし投資対象として、Yahoo!やKADOKAWAを見るのであれば、メイン事業の大きい数字に注目してほしいと感じています。
■今日のまとめ・・・・・・・・・
Yahoo!と、KADOKAWAのインターネット事業が提携し、消費者にとっては便利なサービスが誕生します。しかし、投資家としては、メイン事業の売上に直結する事業ではないため、あまり重要なニュースではありません。KADOKAWAは現在インターネット事業で赤字を計上しているため、今後、メイン事業の数字に注目して判断する必要があります。
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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
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