ワタミ「ブラック企業」から「ホワイト企業」へ
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
・・・・・・・・・・・・・・・
ワタミが「ブラック企業」から「ホワイト企業」へ
・・・・・・・・・・・・・・・
ワタミは1月19日、ホワイト企業大賞企画委員会が主催する第6回「ホワイト企業大賞」特別賞を受賞したことを発表しました。
■なぜワタミはホワイト企業になれたのでしょうか?
ワタミがホワイト企業に転換できたのは、企業としてしっかりと取り組んだ結果だと言えます。
まず、前提知識として、飲食業界は基本的に退職率が高い業界です。特に深夜営業をやっている居酒屋は40%以上でした。つまり、10人入ったら4人は辞めていく、という退職率でした。
ワタミは2015年から企業努力に取り組み、2019年の時点で退職率は8%に下がり、業界の5分の1になりました。それが、ホワイト企業という評価につながったのだと言えます。
■では、ホワイト企業とは具体的に何を指すのでしょうか?
働き方改革には、次のような二つの側面があります。
・ハード面:仕組み・システム(週休2日、8時間労働、有給休暇など)
・ソフト面:労働者の内面(働きやすさ、働きがいを感じるか、など)
「ホワイト企業」の定義も、ニュースでの働き方改革も、上記のうち「ハード面」を指しています。つまり、「残業を減らす」「定時で帰る」などに重点が置かれています。
まさにワタミはその「ハード面」の改善を進め、「実働労働を減らす」「社員の退職率も下がる」という形でホワイト企業の評価を得ました。
しかし、本当に良い企業は「ソフト面」を重視しており、それは従業員一人一人の声を聞かないとわかりません。単に辞める人が減っただけかもしれませんし、以下の声が挙がっているかを知る必要があります。
・「今の仕事にやりがいを感じる」
・「働きやすさを感じる」
・「毎日楽しく感じる」
企業にとって根本的に大切なことは、こうした「ソフト面」であり、業績が上がるかどうかは、ソフト面が改善されているかにかかっています。
しかし、ソフト面の改善は各企業で開示されていませんし、日本全体でソフト面の改善は遅れています。厚生労働省が出している資料を見ても、「明らかに課題」だと断言されている通り、ソフト面の満足度が高い企業が日本では少ないのが現状です。
世界的に見ると、ソフト面が充実しているのは、ヨーロッパです。ヨーロッパの人たちは「人生は、お金も含めた全体的な豊かさを感じる」という考えが一番浸透しているため、豊かさはお金だけに限りません。夫婦関係、パートナーシップ、子育て、育児、地域、家庭、ボランティア、それら全て含めて豊かさと感じています。企業の「働きやすさ」「働きがい」はヨーロッパがお手本になると言えます。
■ワタミの業績の今後は?
ワタミの業績は、今は正直に言えばあまり良くありません。一番良かったピークの時点からは約半分の売り上げです。今回、退職率が低下したのは、病状で言えば「出血が止まった状態」です。ここから元気になり、どこまで健康になり回復していくかは、今の時点では明言できません。
今回の「ホワイト企業」の認定は、第三者機関による認定であり、ワタミにとってイメージづくりにはプラスになります。ですから今後「右肩下がりは一度止まる」とは言えるかもしれません。
ただし、投資家の視点はドライなので、イメージがよくなっても、そこから伸びていく確信は得られないため、投資したいとはなかなか思えません。成長するかどうかは、ワタミの従業員から「今ワタミで働いてみてどうですか?」と聞かない限りわかりません。ですから、ホワイト企業と評価されても、すぐに投資したいという形にはならないのです。
ワタミは接客業です。従業員が不満足で、お客様が満足するということは、まずあり得ません。次のような循環が必要です。
・従業員が気持ちよく接客する
↓
・お客様が心地よく感じる
↓
・お客様の満足度が上がる
このように、「働きたい」従業員の満足度と、「利用したい」お客様の満足度が両方必要です。両方の満足度が高ければ、間違いなく業績は上がっていきます。
残念ながら、企業が一度ついた悪いイメージを回復するためには非常に時間がかかります。人の記憶は消せないので、新しく良いイメージで上書きするのは簡単なことではありません。ですからワタミも、企業イメージを上げ、業績まで上げるには時間がかかると見られます。
ワタミの場合、深夜営業の飲食店であるために経費がかかり過ぎていました。その後、介護、農業、環境など多角経営を進めましたが、相乗効果にはならずに終わりました。今後、お客様の数が前年より増え始めているかなど、具体的な数字を見れば変化の兆しはつかめます。その点に注目していくといいでしょう。
■今日のまとめ・・・・・・・・・
ワタミは、2015年から「ハード面」の働き方改革に務め、退職率を8%にまで下げました。それがホワイト企業の認定につながりました。ただし、本当の業績につなげるには、働き方改革の「ソフト面」である「働きやすさ」「働きがい」が改善されることが課題となっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・
貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
追伸:
もしメルマガにご登録いただけましたら『4つの特典教材』を無料で受け取っていただくことが出来ます。
→ メルマガ登録