東芝テックが自動会計の買い物かご実用化でレジ不要に
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
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【東芝テック】が自動会計の買い物かご実用化でレジ不要に
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> 東芝テックは2021年度中に、買い物かごに商品を入れるだけで、合計金額を自動的に算出するシステムを実用化する。かごに設置したカメラと人工知能(AI)で商品を認識し、既存店舗にも低コストで導入できる。(2020年3月1日『日本経済新聞』より)
■自動会計の「買い物かご」とは?
まず、東芝テックは、東芝グループの子会社の1つです。実際に、東芝テックの約51%の株を東芝が持っています。簡単に言えば、東芝テックは東芝という親会社の子会社であり、たくさんある子会社の1社が東芝テックであると言えます。
では、自動会計の買い物かごについて説明しましょう。今、スーパーやコンビニでは、ほとんどの方が買い物かごを使います。その買い物かごに「POSシステム」で使われていたシステム・カメラ・人工知能を組み合わせたものが、「自動会計」です。
・POSシステム:バーコードで「ピッ」と読み取るシステム
↓
・買い物かごにカメラの要素を持たせる
↓
・それを人工知能でしっかりと解析させる
このような形ができるので「自動会計」なのです。さらに具体的に言えば、次のことができるようになります。
・買い物かごに商品を入れる
↓
・買い物かごのカメラが「〇〇がいくら入った」と認識する
↓
・買い物かごの合計金額が計算される
↓
・決済までできる
これを実用化していくことで、レジをなくしていくという取り組みが始まります。レジ不要のスーパー、レジ不要のコンビニというのを小売店全般に広げていくというニュースです。
■「東芝テック」は具体的にどんな企業?
「東芝テック」は東芝グループの子会社の1つであす。製造業であり、スーパーとコンビニで使われている「POSシステム」と、「複合機(印刷機)」が東芝テックの代表的な商品です。
売上構成は、次のようになっています。
・61%:「POSシステム」を販売した売上
・39%:「複合機(印刷機)」を販売した売上
POSシステムに関して言えば、国内シェアは5割です。つまり、10台のPOSシステムがあれば、5台は東芝テックが作ったPOSシステムとなります。
そしてこのPOSシステムでは、世界最大の企業である、とも言えます。
もし東芝テックの全売上構成を、国内と海外に分けて言うのであれば、次のようになります。
・61%:海外売上(「POSシステム」+ 「複合機(印刷機)」)
・39%:国内売上(「POSシステム」+ 「複合機(印刷機)」)
利益率は、次のようになります。
・POSシステム:売上の4%が利益(利益率4%)
・複合機(印刷機):売上の3%が利益(利益率4%)
■今回は、どのようなニュースでしょうか?
日本に特化して言えば、今、やはり「後継者不足・人手不足で廃業」という背景があります。実際に、創業経営者が65歳、75歳、85歳、、、となった時、次のようなことが起こります。
・自分自身が引退しようをした時に、後継者がいない → 廃業
・アルバイトやパートなど働き手が足りない → 廃業
今から大廃業時代になり、日本350万社のうち100万社が廃業でなくなるという話が出ていますが、この人手不足を解消する、ひとつの大きなニュースであると言えます。
やはり、スーパー、コンビニなどの小売業で、レジをする人はどうしても必要です。もし、レジがなくてもお店が成り立つのであれば、明らかに、今よりも少ない人で大きな店を経営できます。。
そうした時、一番最初にニュースになったのは「無人コンビニ」です。アメリカのアマゾンは2018年9月に、「Amazon Go」という完全に無人のコンビニの実験店舗を作りました。もちろん、商品の棚卸しや配送関係の人は必要になりますが、レジに人を必要としないという意味での「無人コンビニ」ができました。日本のローソンも、いよいよ「無人コンビニ」の実験店舗を始めています。今後、実験店舗で何の問題も起きず、支障もなければ、「無人コンビニ」を広げていけるというニュースも出ています。
ただ、これは大手企業でなければできません。なぜなら、店全体の全面改装が必要になるからです。次のようなことが必要になります。
<店側>
・たくさんのカメラを店内に配置する
・カメラで読み取った映像、データを人工知能に解析させる
↓
<消費者>
・お店に入った時にアプリを起動させる
・お店で買うものを買い物かごに入れる
・お店から出る時に記録される
↓
<店側>
・消費者が買ったものの合計金額が自動的に、クレジットカード経由で決済される
これほどのことをするために、店全体の改装が必要になります。そのため、大企業でなければ、「無人コンビニ」というレベルまではやるのが難しいと言えます。
それに対し、今回の「自動会計の買い物かご」は店全体の改装を必要としません。つまり、小売店の方が買える程度の小規模な投資でできるようになります。たとえば、今、お店にある買い物かごが20個だとします。そのかごの代わりに、東芝テックの「自動会計買い物かご」を20個購入する、という小規模な投資ができれば、「無人コンビニ」よりもはるかに小さな投資金額で「レジ不要」というお店を作れます。
・レジを不要にする
↓
・人件費を抑えられる
↓
・廃業する店舗が減る
このような流れを実現できるというニュースになると言えます。
■投資家として「東芝テック」を投資対象で見るためには?
東芝テックが作る自動会計の「買い物かご」は明らかに便利です。
・消費者:レジに並んで待つ時間がなくなる
・店側;毎日レジに立つ人を減らし、人件費を抑えられる
このように、消費者にとっても、お店から見てもメリットが大きくなります。間違いなく便利なシステムなので、普及する可能性が高いと言えます。 つまり、「東芝テック」は「買い物かご」の実用化をして、実際に本格販売をしていけば、「買い物かご」が本業の売上に貢献していく可能性は高くなります。
あとは、利益率に注目します。この「自動会計の「い物かご」が小売店に1個売れていくと、どれくらい「東芝テック」の利益として残るのかが、最後の検討事項であると思います。
ちなみに、今、現時点(*動画収録時)での「東芝テック」の株価は、理論と実際がほぼぴったり合っています。1円単位で合っているわけではありませんが、理論上の本業の実力がそのまま投資家に評価されているという、非常に珍しい企業です。
その意味で、東芝テックは「読みやすい」企業だと言えます。製造業は実体物があり、親会社の「東芝」は歴史のある企業です。そのため、毎年の変動が小さいので投資家にとって読みやすいのです。本業から算出される理論的な株価と、実際についている株価がほぼ同じ金額なので、株価としては極めて妥当な評価が付いていると言えます。
今後、売上が伸びていく時に、利益率がどうなるかを考えていく必要があります。現状の利益率4%は、やはり低い数字です。4%しか利益が残らないのであれば、「東芝テック」が持続的に成長していくための積極的な再投資するのは難しくなります。今後、利益率が5%、6%、10%などに近づいていけば、かなり有望な企業の1社なのではないかと個人的には感じています。
売上に関してはは、比較的明るい見通しを立てやすいと言えます。あとは自動会計の「買い物かご」が売れると、「東芝テック」にとってどれくらいの利益があるのかに今後注目すると良いでしょう。
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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
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