別府の杉乃井ホテル、従業員千人が10連休
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
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なぜ別府の「杉乃井ホテル」は、従業員千人を10連休にしたのでしょうか?
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>大分県別府市の杉乃井ホテル(客室647室)は、1月14日から23日まで10日連続で全館休業にする。「働き方改革」の一環で、10連休は3年連続。従業員約1千人が一斉に休暇に取る。(「朝日新聞デジタル」より引用)
■杉乃井ホテルは、どのようなホテル?
杉乃井ホテルは、今、大変業績が良い優良企業です。2019年は1年間で約14億円の利益を出しました。今回は、従業員1000人が10連休を取ることで、売り上げが数億円減ると予想されました。それでも杉乃井ホテルは3年連続で10連休を設けました。
なぜこのような思い切ったことをしたのでしょうか?
杉乃井ホテルは1980年代、今の好業績とは逆に業績が悪く、民事再生法の適用を受け、実質的な破産状態に陥った歴史があります。その一番の理由は、なんと、従業員が労働拒否をしたからです。
一般的に、経営者と労働者は次のような考えの違いがあります。
・経営者:低い給料で、長い時間働いてもらいたい
・労働者:高い給料で、短い時間働きたい
杉乃井ホテルはこの点で経営者と労働者が大きく対立し、1990年に労働者が「私たちは働きません」と実力行使し、ホテルが数ヶ月間営業停止になる事態になりました。
このような経験から会社は、再生後、従業員に手厚い仕組みや人事制度を整えてきました。その一つが、今回の10連休だったのです。
■なぜ1月の中旬に10連休?
人は、忙しい時期があっても、すぐその後に休みがあると「頑張ろう」という気持ちになります。
ホテルは、年末年始の忙しい時期には従業員に働いてもらいたいので、その後に休みを設ければ「1月14日からは10連休だから、年末年始は頑張りましょう」と言うことができます。そのように、忙しい時期のモチベーションを上げる意味がありました。
また会社はこの10連休に、従業員に充実した時間を過ごしてもらいたいと考え、希望者を対象に会社がお金を払う海外研修の機会も設けました。日本のホテルで働く従業員が、海外のホテルを利用して満足のいくサービスを体験し、休んでもらおうという考えです。
ここまで考える企業は日本ではあまりなく、従業員を大切にしている会社であると言えます。
■杉乃井ホテルの10連休が社会に与える影響は?
今、社会全体で労働者の働く時間を減らし、休日を増やすという流れが確実にあります。杉乃井ホテルは、もし10連休を取らなければ、数億円の売り上げを上げられますが、それよりも人材募集に力を入れたと言えます。
ホテル業界は、休みが不規則であったり、給料の水準が低いことなどから離職率が高く、40%以上の人が入社しても1年以内に辞めていきます。
しかし、杉乃井ホテルへの就職を希望する人の中には採用面接で「10連休があったから」と伝える人もいて、就職希望者が増えたことも話題になっています。実際に、社員の定着率は上がり、長期的に見ても従業員の満足度を上げることにつながっています。
やはり、ホテルはサービス業であるため、次のような形で従業員の満足度を高めることが顧客への満足度にもつながっていきます。
・会社が従業員を大切にする
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・従業員の満足度が上がる
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・従業員がお客様に対して余裕ある接客をする
↓
・お客様の満足度が上がる
↓
・業績が上がる
会社は、このように考えているのです。実際にお客様も、その会社に満足して働いている人から接客を受けたら、気持ちよく感じることでしょう。
10連休の取り組みは、杉乃井ホテルではうまく行った仕組みので、これからも続く可能性は高いでしょう。会社の業績も好調なので、従業員の満足度を高め、顧客の満足度を高めることはしばらく続くと予想されます。
今後、他のホテルがどのような対応をするか、注目していくと良いでしょう。
■今日のまとめ・・・・・・・・・
杉乃井ホテルは過去に、従業員が労働拒否をして破産状態に追い込まれた歴史があります。その経験から、従業員への制度を手厚くするため、10連休を採用しました。従業員を大切にし、顧客への満足度を高める狙いがあります。
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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
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