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【楽天】送料無料化を先送りへ

浅川です。

白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。

【楽天】送料無料化を先送りへ

 

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【楽天】送料無料化を先送りへ

 

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> 楽天は6日、ネット通販サイト「楽天市場」で一定金額以上購入した場合に送料無料とする施策について、18日に全店舗で始めるとしていた当初計画を見直し、可能な店舗だけで開始すると発表した。全店導入時期は未定。(2020年3月6日『朝日新聞』より一部引用)

 

 

■楽天の株価は、理論上の0.9倍

 

まず、「楽天」の理論上の株価と、実際の株価を確認していきます。楽天の「理論上の株価」は、楽天グループが上げている営業利益から算出して計算する株価です。それに対して、動画を撮影している現時点(2020年3月)の「実際の株価」は、0.9倍の株価になっています。

 

要するに、本業の実力に対して、「投資家の評価が低い」と言えます。

 

でも、楽天の売上はひたすら右肩上がりです。ただし、営業利益に関しては、年によってかなりの変動があります。売上は右肩上がりですが、楽天という企業が投資をするので、営業利益は上がったり下がったりを繰り返しています。その結果、投資家の株価の評価は、現時点では実力よりも低い評価になっている、と言えます。

 

「楽天」というグループの売上は、次のように大きく2つの柱があります。

 

・インターネット事業:57%

・金融:35%

 

インターネットは、いわゆる「楽天市場」の売上です。金融は、たとえば、「楽天銀行」や「楽天証券」などを言います。今回は、一番大きな売上を上げている本体の「楽天市場」で送料無料という話です。楽天が、「楽天市場」の加盟店に対して、2020年3月から「全店送料無料にしてください」と発表したことに対し、一部の加盟店がものすごく反発し、「独占禁止法における優越的地位の濫用ではないか」と訴えています。

 

結局、楽天は2020年2月、それでも変わらず送料無料にしようとしましたが、3月の実施予定を先送りしたというニュースです。時系列で振り返ってみましょう。

 

・〜2月中旬:楽天は「送料無料を実施」と発表

・2月末:公正取引委員会が、楽天グループに立入検査

・2月末:公正取引委員会が東京地方裁判所に対し、楽天グループの送料無料の緊急停止命令を出すよう、申し立てる

・3月:楽天は送料無料を先送り

 

公正取引委員会とは、独占禁止法を運用している市場の中で、「何か独占が行われていないか?」を見張っている組織です。今回で言えば、「独占禁止法に対して楽天グループが、その加盟店に対して優越的な地位を濫用していないか?」を見張っている形になります。

 

結果的に、楽天は送料無料を先送りしましたが、はたしてこれは、本当に公平中立なモノの見方ができているのか?ということを今回一緒に考えていきます。

 

 

■楽天は、本当に職権を濫用したのでしょうか?

 

もし、楽天グループが加盟店に対して独占的な地位を濫用し、職権の濫用として、優越的な地位の濫用を行っていると訴えているなら、これは逆に「国家権力の濫用」の可能性もあると言えます。今回は、その疑問を呈したいと考えています。

 

まず、楽天グループの加盟店の80%は「送料無料」の方針を示す前の時点で、既に「送料無料化」を実施していました。8割の加盟店にとっては何の問題もなく、「いや、そもそも送料無料でやっています」ということでした。ではなぜ、楽天グループは送料無料を一生懸命言っているかと言えば、単純に、消費者にとって見やすくわかりやすい価格表示で統一したいからです。

 

もし、「商品 A」に対してあるお店では100円、あるお店では99円、ということが楽天市場の中であった時に、消費者から見れば、「全く同じ商品」であれば、「99円で買った方がいい」と考えるでしょう。では、次の場合はどうでしょうか?

 

1)100円のお店:送料込み

2)99円のお店:送料別

 

この場合は、1の「100円で送料無料」のお店の方が消費者にとってわかりやすく、「安い」と言えます。 このような混乱をなくすために、楽天は送料無料化を打ち出そうとしています。パッと見た瞬間に、全く同じものが「2の店は99円だから安い。でも実は送料別だった」となると、結果的には消費者が表示より高い値段を払うことになります。それをなくすために、楽天市場は送料無料化を打ち出しています。

 

そもそも、方針を示す前の時点で80%は送料無料化を実施済みであった、というのが今回のポイントの一つです。

 

そして2月時点で楽天市場が送料無料化をグループ全体で統一することを発表した時に、12%の加盟店は同意しました。つまり、次のようになります。

 

・既に送料無料を実施済みの加盟店:楽天市場の80%

・新たに送料無料に同意した加盟店:楽天市場の12%

・送料無料に同意する加盟店の合計=楽天市場の92%

 

これら、92%の加盟店にとっては「送料無料」に問題はなく、反発したのは残り8%の加盟店だったと言えます。

 

ただし、2月に開かれた楽天グループの代表取締役三木谷社長の決算説明の話を聞くと、この8%の加盟店に関しては、選択肢をいくつも出したということです。具体的に言えば、次のような内容です。

 

・「値上げしていただいてもいい」

・「送料を含めた適正な価格でいい」

・「どうしても納得ができないならば、楽天市場を出ていただいてもいい」

・「それにより何らかの経費負担があるのなら、全面的に支援をする」

 

つまり、単に「価格据え置きで加盟店だけが送料を負担して、利益を減らしてください」という一方的な命令ではありませんでした。仮に、楽天グループからアマゾン、ヤフーショッピングに変えたいということがあるなら、今まで楽手市場に対して払っていただいている加盟料などもあるので、その分に関しては完全に支援をする、と言っていました。

 

それでも、全店送料無料化で統一し、楽天市場を使う消費者の方に、わかりにくい価格表示をなくしたいという説明をしたのです。どうしても納得いただけないのなら、出ていただき、その金銭的な支援までを行います、ということを言ってるのです。

 

それにもかかわらず、反発した加盟店が出て、「楽天グループが強い立場で優越的な地位を加盟店に対し、間違った使い方をして濫用している」と言うことで公正取引委員会が動いたなら、これは「国家権力の濫用なのではないか」という見方もできることを、今回伝えたいと考えています。

 

 

■楽天の今後の見通しは?

 

やはり、強く伸びていく企業は、どうしてもこのような問題と向かい合っていかなくてはいけません。

 

たとえば、googleは、今でも検索エンジンの世界最大手の巨大企業ですが、なんとヨーロッパ ・EUの独占禁止法で2回も賠償金を払わされています。そういったことを乗り越え、それでもやはり、今でも google が世界中の人に使われています。facebookに関しては、世界中の人達が金融サービスを低価格で便利に使えるようにと、独自仮想通貨のリブラを発行しようとしました。しかし、結局、米国議会に「これは国家に対して通貨発行権への挑戦だ」とみなされ、米国議会の承認が得られずに強制的に止められています。

 

このように、成長してうまくいっている企業には問題が起きやすくなります。そこで、私たち投資家としては、次のことを考える必要があります。

 

・公平中立なモノの見方ができているのかどうか?

・企業が(問題が起きても)それでもやはり乗り越えていくことができるかどうか?

 

googleは、EUから「独占禁止法違反です」「賠償金を払いなさい」と2回も言われて支払っても、それでも成長の歩みを止めていません。今回の楽天に関しても「これからgoogleのように乗り越えられるかどうか?」を、今後は注目していくと良いと考えています。

 

 

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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。

 

浅川淑子(あさかわよしこ)

 

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