日テレがNHK同時配信に 追随できない理由
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
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日テレがNHK同時配信に 追随できない理由とは?
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■日本テレビの株価は高い? 低い??
まず、「日本テレビ」という企業の理論上の株価と、今(*動画撮影時の2020年3月)の株価を見ていきます。ここでいう「理論上の株価」とは、本業の営業利益から計算して求められる株価を言います。
すると、日本テレビの実際の株価は、「理論上の株価の約半分」となっています。これは現時点で、コロナショックの影響もあり、株価が全体的に急落しているという事情もありますが、とはいえ、理論上の株価に比べ、投資家からの評価はかなり低い状態になっています。
その理由を数字で見ると、【本業の営業利益が減少傾向にあるから】です。それが、投資家からの評価がかなり低くなっている理由です。
NHKは公的機関なので私たち投資家は株を買うことはできませんが、日本テレビの株価は、NHKが地上波の番組放送と同時にネットでも番組を配信をすることにしたことが影響しています。NHKのネット配信の視聴登録者は2日間で10万人になり、NHKは2020年中に視聴者350万人を目標にしています。
この「350万人」という数字は、地上波の対象になっている視聴者3,500万人の10%に当たります。つまり、視聴者の10%がネットで見られる取り組みを、NHKが始めたと言えます。
今、テレビを見るより、スマートフォンで動画を見る人がどんどん増え、今年は特に5G の普及で、これからさらに増えると予想されます。実際に、2019年の日本において、ネットの広告の金額がついにテレビの広告の金額を上回ったという流れがあります。テレビがどんどん見られなくなり、逆に、スマートフォンで動画を見る人がどんどん増えているため、NHKは自分たちの番組をネットでもリアルタイムで流し始めたのです。
この動きを見て、民放キー局4社の中の最大手である日本テレビも、NHKと同じように、地上波で放送した番組をネットでも同時配信するということをやりたいと考えていますが、それが「追随できない」状態となっています。
■なぜ「追随できない」のでしょうか?
ニュース報道で、日本テレビは「地方局へ配慮して(同時配信を)やっていない」と発表しています。これは、私(白坂)からすると建前ではないかと感じます。
日本テレビには、鹿児島県のテレビ局、熊本県のテレビ局、青森県のテレビ局など、系列の地方局がたくさんあります。全国放送と地方の放送局が同じ番組を流すときもあれば、地方局だからこそ独自の番組をやることもあります。
そうしたとき、もし、NHKのような同時配信をやると、地方局の番組を見る人がネットで配信される全国放送の番組をスマホで見ることが可能になります。すると、「同じ系列なのに地方局の視聴者を奪ってしまう」ことになります。それに配慮して、「今のところやりません」というニュースになっています。
では、なぜ建前だと感じるか説明しましょう。それは、日本テレビはネット配信の番組の会社を1つ買収しているからです。Hulu(フールー)という会社で、24時間、365日、何らかの番組をやっている会社です。その会社を日本テレビは実質持っているのです。もし、地方局に配慮してネット同時配信をしないのであれば、「Huluは地方局の視聴者を、テレビではなくスマートフォンの方に奪っているのではないの?」と考えられのです。それが引っ掛かります。
■同時配信に踏み切れない本当の理由
では、本当の理由は何かを考えれば、やはり「収益性」になると考えられます。繰り返しますが、NHKは次のことをやりました。
・地上波の番組放送と同時にネットでも番組を配信
・ネット配信の視聴登録者が2日間で10万人
・2020年中に350万人を目標
この仕組みを整えるのに、NHKはたくさんの先行投資をしました。日本テレビは、同じことをやる上で「採算が合うのか?」という答えに確信がない状態だと考えられます。だから、同時配信をやってないのだと言えます。
では、NHKはなぜやれるかと言えば、NHKはスポンサーからの収入ではなく、日本全国民からの受信料により集めているからです。だから、7000億円という巨額の予算があり、大掛かりな仕組みやシステムを整えるためにお金を惜しみなく使えます。
それに対し、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビなどの民放企業は民間会社なので、スポンサーからの広告収益により、自分たちの使える予算が変わってしまいます。つまり、次のような考えだと見られます。
・NHKほど莫大な予算で同じ仕組み・システムを整えられない
↓
・投資したときに、投資分の収益を得られる確証がない
↓
・同時配信を追随することができない
このように私は考えています。
今回、投資家としての視点で大事なことは、とにかくニュース報道をしっかりと把握し、「本当にそうなのか?」という視点を持つことです。そして、【建前と本音を常に同時に見ていく】とう視点を、投資家として持つことが大事だと考えています。
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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
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