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日本郵政G 郵便局1万人削減で労使協議へ

浅川です。

白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。

日本郵政G 郵便局1万人削減で労使協議へ

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日本郵政G 郵便局1万人削減で労使協議へ

 

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> 日本郵政グループは全国の郵便局に配置する局員数の見直しに向けて労働組合と協議に入る。全体の5%にあたる1万人の削減案などが浮上している。(2020年3月23日付『日本経済新聞』より一部引用)

 

■郵便局が1万人も削減?

 

まず、「日本郵政グループ」について確認します。次の3つの大きな事業により成り立っています。

 

1)ゆうちょ銀行

2)かんぽ生命保険

3)日本郵便

このうち、「3)日本郵便」」、つまり郵便局の事業が今回のニュースになっています。

 

ここで、 グループ全体と、日本郵便の従業員の数を比較すると、次のようになります。

 

・日本郵政グループ:21万人

・日本郵便:19万人

 

このように、21万人の日本郵政グループのうち、9割に当たる19万人の人たちが働いている郵便局で「1万人を削減する」という案が出て、それで労使協議が始まりそうだ、というニュースです。削減方法は、「希望退職を募る」「これからの新規採用を減らす」という形があり、合計で10,000人を減らしていくと見られます。

 

 

では、「どのような状況であるか?」を説明します。それは、郵便局は「本業自体は完全に赤字で成り立ってない」ということです。

郵便局は、もともとは公の仕事、つまり「官」がやっていた仕事を民営化しました。当時は公共事業的な役割もあったため、非常に大きな人数で、はっきり言えば「利益が出ない事業」もできていました。でも、今は次のような状況があります。

 

・ハガキを出す人が減った、

・手紙を書く人が減った、、

・年賀状を書く人が減った、、、

・暑中見舞いを書く人が減った、、、、

これらを考えた時に、まず「郵便」そのものは完全に赤字で、経営としては全く成り立っていない、と言えます。

 

 

■日本郵便はどのように利益を得ているでしょうか?

 

では、「利益がないのに、なぜ成り立っていたのか?」と言えば、同じグループのゆうちょ銀行とかんぽ生命からの手数料で利益を得ていたからです。

 

ゆうちょ銀行からすれば、郵便局を窓口として使うことができます。かんぽ生命からすれば、保険の販売窓口として郵便局を使えます。そのため、次のようなことが成り立っていました。

 

・ゆうちょ銀行→郵便局:手数料が支払われる

・かんぽ生命→郵便局:手数料が支払われる

 

このように、同じグループの2社からの手数料によって、郵便局は成り立っていました。

 

ところが、ゆうちょ銀行から郵便局への手数料を、ゆうちょ銀行は「減額したい」と言っています。同じように、かんぽ生命からも郵便局に対して、別個の手数料を「減額したい」と言っています。

 

その理由はなぜでしょうか? まず、銀行は「郵便貯金」という形で預金者からお金を集めますが、集めただけでは利益が出ません。預金者から集めたお金を、もっと利回りのいいものに運用して初めて利益が出ます。

 

利益の中心は、かつては国債でした。銀行からすれば、国債が最もリスクが小さく、預金よりも国債で金利分の収益があれば、どんどん銀行の利益が増えていきます。ですから、基本的には考えられるだけ一番低リスクの

「国債」がメインので運用先になっていました。

 

けれども、今はもう、ゼロ金利時代です。日本国債で運用しても、ほとんど金利はつきません。そのため、ゆうちょ銀行からすれば、明らかに運用における収益は減っていると言えます。つまり、収益が減っているから手数料を減らしたい、ということです。

 

かんぽ生命にしても、保険の契約数は減っています。しかも、2019年には「かんぽ生命は、不正契約でものすごくたくさんの契約者と結んでいた」というネガティブなニュースが明るみに出ました。そのために、かんぽ生命の新規契約数はもちろん、解約を待つ人が増え、その結果、かんぽ生命自体で業績が厳しくなり始めています。そこで、かんぽ生命も手数料を減らしたい、と考えています。

 

このような結果、日本郵便は「本業の郵便が右肩下がりで、グループ2社からの手数料が減らされる流れ」になるために、「1万人の削減もやむを得ない」という判断になっています。

 

 

■1万人の削減でどのような影響に?

 

1万人という数字は確かに多いですが、数字を判断するときに、「比べる」ということは非常に重要です。 今回であれば、日本郵政グループと「何か」を比べて、それで「多い? 少ない?」と判断することが大事です。

では、「何と比べるか?」と言えば、もともと国がやっていた事業ではあったものの、民営化して、今でもうまくいっている・成功している企業の1社です。

 

その一つに、「NTT」があります。NTTは、もともと国がやっていた「通信事業」でしたが、その後に民営化した企業です。

 

そうすると、国はやはり収入が税金なので、お金の使い方が贅沢だと言えます。さらに言えば、「無駄が多い」とも言えます。民間は、税金のように、確実に徴収できる訳ではないため、収入がありません。それだけ民間企業のほうがお金に対して厳しくなります。シビアになり、「民」の方が、無駄なお金を極力使わないようにしています。

 

<官(国の事業)>

・無駄なお金の遣い方をする

・無駄な持ち寄せ仕事をする

・仕事量よりも多い、無駄な人員を雇う

 

<民(民間の事業)>

・仕事量よリも多い無断な人員を減らす

 

民営化した後、NTTはこのようにして、あまり効果のないものに対して支払うお金を減らす、ということをやっていきました。

 

結果的に、33万人を23万人にし、10万人削減しました。これは数字で言えば33%減に当たります。「3人に1人の削減」を、NTTは民営化によって実現しました。

 

それを考えると、21万人の郵政グループで今回1万人の削減は、「5%の削減」です。改革としてはかなり小さいと言えます。なぜ小さいと判断できるかと言えば、「比べたから」です。

 

NTTは、民営化したことにより、3人に1人を削減しました。それに対して、日本郵政はここまで危機的な状況になっても、5%の削減ということになれば、まだまだ本質的な、抜本的な改革からは程遠いという言い方ができます。

 

「削減」と聞くと、「雇用を守る」という観点からすれば、否定的な、ネガティブなイメージがあります。けれども、やはり組織というのは、少数精鋭で、仕事量を少ない人数でやることにより、一人ひとりの能力が上がっていきます。さらに言えば、社会全体で見たときに、人は、衰退していく事業で長く働くよりも、成長していく事業に移っていく方がいいものです。

 

社会の中で、人材の新陳代謝が起きることは非常に重要です。「今からハガキを書く人が増える」、「手紙を書く人が増える」、「年賀状を書く人が増える」、「暑中見舞いハガキを書く人がどんどん増える」というように、時代の流れを逆行することは絶対にあり得ません。

 

ですから、削減される1万人の方々は、今から伸びる会社、伸びる産業、伸びる事業に転職した方が、この方々にとってもやはり良いのだと言えます。そのようなものの見方をしたときに、「1万人削減」というニュースが、どれほど大きいのかを「比べる」ということが重要です。

このニュースから私たちが学べることは、次のようなことです。

 

・単に数字だけを見ない

・その数字が大きいか、小さいか、何かと「比べる」

・比べることにより、その大きさを判断する

 

これが、今回の学びだと言えます。1万人という数字は大きく見えますが、郵便局の歴史的な状況からすれば、まだまだ本格的な、抜本的な改革からは程遠いと言えると考えています。

 

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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。

 

浅川淑子(あさかわよしこ)

 

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