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異次元の金融緩和への私見

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1.なぜ異次元の金融緩和は行われたのか?

2.異次元の金融緩和が行われた結果は?

3.異次元の金融緩和が行われたことによって見えた新たな課題は?

 

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1.なぜ異次元の金融緩和は行われたのか?

まずは経済の大原則から。

(1)「お金」と「物」の交換

(2)「お金」>「物」・・・物価上昇(インフレ)
(3)「お金」<「物」・・・物価下落(デフレ)

 

日本において「失われた20年」は「デフレ経済」だと言われていました。

物価下落が続いていたからです。経済学的には、「お金」<「物」だと考えられていました。

要するに、物は増え続けているのに市場に出回るお金が増えていなかった。

だったら、

 

市場に出回るお金を増やせば問題は解決するのではないか?

 

これが異次元の金融緩和が行われた最も分かりやすい理由となります。

 

 

2.異次元の金融緩和が行われた結果は?

【「日本銀行」→ 「銀行」→ 「家計・企業・政府」】

 

異次元の金融緩和というのは、「日本銀行」から「銀行」へ大量の資金を移動させた政策です。

具体的には、銀行が持っていた国債を日本銀行が大量に買い取りました。

もし「銀行」から「家計・企業・政府」へも資金が移動した場合は、問題が解決します。

つまり少なくてもデフレば解消します。

 

そして経済全体から考えると、理想的には

 

1位:企業が銀行からお金を借りる

2位:家計が銀行からお金を借りる

3位:政府が国債を発行してお金を調達する

 

ということになります。

 

まず1位の企業は、銀行からお金を借りませんでした。
(コロナショックという特殊事情の発生前の状況です)

 

理由は、企業はバブル崩壊で懲りていたことと、本当に優良企業は利益剰余金による現預金を約300兆円と大量に内部留保していたからです。銀行からしても、経済全般からしても、お金の使い方が最も上手な企業(経営者)が銀行からお金を借りて事業投資してくれるのが理想なのですが、異次元で金融緩和されたとはいえ、企業はお金を借りませんでした。

 

次に2位の家計も、銀行からお金を借りませんでした。

理由は、家計は990兆円もの現預金をもっていたので、お金を借りる動機がなかったから、です。現預金を豊富に持っているのにお金を借りる必要がありませんでした。

 

だから、

異次元の金融緩和によって実際に起きた資金移動は、

 

3位:政府が国債を発行してお金を調達する

 

でした。

政府が国債を発行する→ 銀行が買い取る→ 日本銀行が買い取る

 

政府というのは、「家計」「企業」「政府」の3者の中で最もお金の使い方が下手な経済主体です。

理由は簡単で、「政府」は優先順位をつけないからです。たとえば、日本人1億2千6百万人は全ての人が等しく重要だという考え方を持っています。1人1票の民主主義において政府は博愛主義であるのが最も合理的であるような感じがあるからです。「ある特定の組織」「ある特定の人」を重視するという優先順位をつけた政策を実行しづらい。つまり戦略がないわけです。

 

だから、動かす金額の大きさの割には効果の小さなことを沢山やりがちなのが政府という経済主体です。

 

異次元の金融緩和をする前から、家計には993兆円、企業には300兆円ものお金が余っていました。

その余っていたお金が貯め込まれるのではなく、市場に出てきさえすれば景気は一気に良くなる。

市場にお金を出すためのカンフル剤として期待されたのが異次元の金融緩和。しかし、論理的には

 

「あまり」効果がなかった

 

日本銀行から銀行へ、どれだけ積極的に資金移動をさせたとしても、家計も企業も銀行からお金を借りませんでした。

つまり、相変わらず市場に出回るお金の量は増えませんでした。

 

ただ、「あまり」効果がなかったというだけで、全く効果がなかったわけではありません。家計における預金も、企業における内部留保も、偏りがあります。つまり、預金を持っている人は持っていますが、持っていない人は持っていません。預金に余裕がない「家計」や「企業」は借りやすい条件下を利用してお金を借りました。結果、異次元の金融緩和のおかげで、少しは市場に出回るお金の量は増えました。莫大な資金投入量に比べたら薄い効果だったのかもしれませんが、しかし、少しは効果があったとも言えます。

 

 

3.異次元の金融緩和が行われたことによって見えた新たな課題は?

経済学者や経済評論家は、物に対してお金が不足しているデフレが本質的な問題だと考えた上で異次元の金融緩和を提言していました。ただ、思い切った異次元の金融緩和を行ったことによって、

 

資金量が課題でないことが明確になった

 

と言えます。

経済学者や経済評論家は「お金」の課題だとしてお金の量を増やすことで課題解決を提案しましたが、思い切った異次元の金融緩和をしたことで、仮説が妥当ではなかったことが明確になったのです。「お金」の方の課題ではなく、

 

人がお金を積極的に出してでも欲しいと思う「物」や「サービス」の方の不足が本質的な原因

 

お金はある。

銀行にある。

一杯ある。

 

にも関わらず、

なぜ、その預金されているお金を市場に出さないのか?

それは、出したいと思わないから。出したいと思うほど魅力的な商品やサービスが少ないから。

 

品質の高い商品は一杯ある。

品質の高いサービスも一杯ある。

ただし、人は論理ではなく感情で買う。

 

欲しいのは、必ずしも、最高品質の商品でもなければ最高品質のサービスでもない。

そうではなくて、

 

自分の心理的な悩みを解決してくれる商品

 

たとえば、自己重要感。承認欲求。

相手のことを凄い人だと思いたいのではなく、自分自身が凄い人だと感じたい。

全ての人が、自分を中心に、自分のストーリーを人生を通じて一生懸命に生きていいっているのに、他者は自分のことを歯車の一部としてしか扱ってくれないという究極の矛盾。もし、自分のことを主役として扱ってくれる商品・サービスがあったら、、、よろこんでお金を払うのに、、、

 

自分を主役として扱ってくれる商品・サービスが圧倒的に不足している

 

日本銀行が銀行に大量に資金移動をさせるというのは、あくまで表面上の課題解決法。

異次元で金融が緩和されれば、「これから景気が良くなっていきそう」という気はするので、その気がした分の心理的な景気浮揚効果はありました。そして、お金に余裕がなかった家計と企業に関しては、お金を借りることで市場に流通する資金量は少しは増えました。なので、異次元の金融緩和は全く効果がなかったわけではありませんでした。少しは効果がありました。

 

ただ、

投入された資金量に比べて市場に出回った資金量が少なかった分、効率の悪い政策だったとも言えます。

「やらないよりはやっ方が良かったかもしれないけれど、、、」という「、、、」が残る政策でした。

本質的な課題解決のためには、やはり、

 

 

お客様が心から求めている商品を流通させられる真の「商人」「経営者」の重要性がますますで高まった

 

 

と言えると思っています。

 

文責:

白坂慎太郎