イオン63億円赤字へ
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
・・・・・・・・・・・・・・・
> イオンが10日に発表した2019年3~11月期の連結決算は、最終損益が63億円の赤字(前年同期は6億3000万円の黒字)となった。営業収益は前年同期比0.8%増の6兆3870億円、経常利益は前年同期比15.3%減の933億円、営業利益は前年同期比5.4%減の1030億円だった。(『日本経済新聞』より引用)
■イオンの「赤字」の意味合いは?
イオンが営業赤字というニュースですが、決算発表の通り、営業収益は過去最高です。ではなぜ、赤字なのでしょうか?
そもそもイオンは、スーパー「ダイエー」をはじめ、小さい会社を吸収合併してM&Aで大きくなりました。たくさんの子会社がある中、そのうちの一社である株式会社カジタクが過去に不正会計をしました。今回の赤字は、その過去の不正会計の処理により出た【決算上の赤字】です。本業で見れば、実は、売り上げも営業収益も伸びていますから、今後、下半期以降は黒字になると見られます。
今回のニュースで大切なことは、投資家は【数字を読めなくてはいけない】ということです。単純に「最終赤字63億円」と出てきた数字を見て、「調子が悪い」と判断はできません。【その赤字の原因は何か】という本質を見る必要があります。
今回であれば、「本業はうまくいっているが、会計上の問題だ」と気付けないと、今後の予測ができません。
また、イオンの場合はM&Aで成長し、売り上げも資金力も上がり、業界1位ですが、業界自体は成長産業ではないことにも気付く必要があります。いつ成熟・衰退してもおかしくない業態です。今後も、たとえ黒字なっても、いずれ赤字に転落することもあり得る、というのが投資家の考えです。
■今後のイオンの取り組みは?
イオンは、今回の「赤字決算」の発表に伴い、創業家出身の岡田元也社長が退任し、内部昇進で吉田昭夫氏が新社長に就任する人事を発表しました。
現在のイオンには、「ネット時代に乗り遅れた」という最大の課題があります。リアル店舗の売り上げが大きかった一方、ネットビジネスには乗り遅れ、イオングループ全体でネットビジネスの売り上げはわずか1%に過ぎません。
本来、ネットビジネスは人件費などがあまりかからず、リアル店舗よりも利益率が高い業態です。今後、イオンとしては、ネットスーパーなどデジタル化に力を入れ、利益率を上げていけるよう、若い社長に期待したということが言えます。
ここでもう一つ、投資家の視点で大切なことがあります。それは、投資家は【人を見る必要がある】ということです。今回のニュースで言えば、「新しい社長がどのような人か」を見る必要があります。
一般的に、新社長が就任するときには、次のような二つのタイプがあります。
<サラリーマン社長>
・社員が係長→課長→部長→役員と出世し、社長に【内部昇進】
・ビジネス上は、思い切ったことはやらず【少しずつ改善】タイプ
<プロ社長>
・外部の経験者が「この企業をやるように」と【株主から委任】
・ビジネス上は、思い切りの良い【抜本的な改革】タイプ
今回の新社長は、サラリーマン社長です。デジタル化に関しては、抜本的に改革をするより、「売り上げを1%から2%、3%へ」と少しずつ改善していく方針だと見られます。そこを投資家がどう判断するか、次の二つの方向性が考えられます。
・「抜本的な改革でなければ、面白味がない」
・「資金を投じても資産が増えると思えない」
↓
<投資しなくなる>
・「改善の余地があるなら、ローリスク・ローリターンでもいい」
・「銀行預金程度でも、資産を増やしたい」
↓
<投資する>
いずれかの見方が多いか少ないかにより、株価の上下は変わっていくでしょう。創業家から見れば、自分たちの創業した会社の方針が新社長により抜本的に変えられる恐怖はないため、安心感のある人事にしたと言えます。
この先、他のネットビジネスとの競合も多い中、イオンがどのような特色を打ち出すか、消費者としては「どのように便利になるか」を見ていくと、具体的な企業の方向性も見えていくでしょう。
■今日のまとめ・・・・・・・・・
イオンの赤字は【決算上の赤字】です。営業利益は過去最高であるため、本業の業績を知るには、決算上の赤字の原因を知るなど、本質に迫ることが大切です。イオンは今後、新社長が就任しデジタル化を加速させる予定です。どのような特色を打ち出すかに注目したいところです。
・・・・・・・・・・・・・・・・
貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
追伸:
もしメルマガにご登録いただけましたら『4つの特典教材』を無料で受け取っていただくことが出来ます。
→ メルマガ登録