【ANA】大幅減便続き5,000人休業へ
浅川です。
白坂先生に、今日の「なぜ」を解説していただきます。
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【ANA】大幅減便続き5,000人休業へ
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> 全日本空輸(ANA)は全社員の3割に当たる5000人の客室乗務員を対象に、1人当たり数日程度の一時帰休をさせる方針を固めた。同社は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国際線の6割減便を決めており、一時的に大幅な人員余剰が出ているため。(2020年3月19日『日本経済新聞』より一部引用)
■ANAの判断は合理的?
まず、今の前提条件として、コロナショックのため、とにかく旅行客が激減していると言えます。「国内から海外」、「海外から国内」という旅行客は、いずれも今激減しています。
その理由は、日本から海外に出ていく国際線が通常の6割減便しているからです。それにより、ANAは正社員8千人のうち5千人、全社員の6割強の方々を一時休業すると決めたことになります。ただ、この休業そのものは非常に緩やかな休業です。発表されている人数だけを見ると多く感じますが、全員に長期で休んでいただくのではなく、1人当たり数日ずつ休む形だと発表されています。期間は、4月から最長1年間という計画です。
これは当然、合理的だと考えられます。企業としては、実際に仕事が減っている分、社員さんたちに休んでいただき、その分、お給料を減額させてもらうというのは、非常に合理的な判断をしていると言えます。
実際、航空業界は今、次のようにものすごく大きな影響を受けています。
・全世界:マイナス12兆円の旅客収入減
・日本国内:マイナス3000億円の旅客収入減
このように収入が減っている分、航空会社は逆に人件費などの経費を圧縮せざるを得ないので、今回のANAの対応は、企業としてやむを得ないかな、と感じます。
ただし、ANAは他の航空会社に比べて、人件費の圧縮をかなり小さく留めています。たとえば、全世界でマイナス12兆円という旅客収入減が起きていますが、このタイミングでもっと大規模な人員削減、いわゆる「リストラ」を行っている航空会社もあります。休んでいただくのではなく、次のような形です。
・辞めていただく
・1人あたり3ヶ月、丸ごと休んでいただく
このような場合、当然、働かない分、お給料は減ります。航空会社のANAでは、機内で働いていらっしゃるパイロットの方、もしくはCAさんという方々は、基本給に加え、飛行機に乗った分の乗務手当があります。ところが、3カ月間、お仕事はお休みです。つまり、「飛行機に乗らなくていいです」となれば、単純にその3カ月、本来飛行機に乗ったら乗った分でもらえたであろう、そのお給料が減ることになります。
他の航空会社の中には、「大規模な人員削減・リストラを実現した」という企業や、「1人あたり3カ月休んでもらっている」という企業もあります。それに対してANAは、確かに5000名という人数は多いですが、一人当たり数日ずつ休むという形で最小限にとどめていると考えると、合理的で、賢明な判断をしているのではないか、と感じます。
■この先の見通しは?
コロナショックは、あくまでも台風と同じ一過性です。5年、10年、20年後の経営環境に影響を与え続けるような出来事ではありません。そうすると、必ずこの騒動が落ち着いて、沈静化して収まった後は、やはり旅行業界に人が戻っていきます。
今、「外出禁止」と非常に圧縮されているので、逆にそれが解放されると「やっぱり外に出たい!」と、旅行業界に人がまたたくさん戻ることは、必ず起きるのです。
そうした時、たとえばリストラをした航空会社は、人的なスタッフが弱くなります。もしくは、長い期間休んでもらっていた場合、たとえば3カ月働いていないことで、働く人の仕事の技量が低下することがあります。ANAはそれを最小限にとどめたということであれば、世界の他の航空会社に比べて、人的な優位性は、むしろ強くなる可能性があります。
ANAは、人員を削減してリストラしたわけでもなければ、一人一人、ものすごく長期で休んでもらっているわけではありません。ですから、観光客、飛行機に乗って旅行したい方がまた戻ってきたら、全く支障なく、そのサービスを提供できるようになります。
それは、他の競合他社から比べると、人的な面で、経営体制、経営資源としては強い状態にあり、競争優位の状態になっていると見ることもできます。
■今回のニュースから、投資家として学べることは?
今回、「ANAの大幅減便が続き、5000人休業へ」というニュースに関して、投資家としてどのように判断した方がいいかと言えば、まず、次のように見ることができます。
・「約5,000人の休職にとどめた」
↓
・「ANAとして、非常に損害を小さくとどめた」
↓
・非常に合理的な意思決定である
今、日本国内だけで3,000億円の旅客収入が減っているので、それは大きい金額の損害・ダメージではありますが、ANAが今回のような対応で何とか持ちこたえることができたならば、いざコロナショックが落ち着いて鎮静化した後に、観光客、旅行客の方々が戻ってきた後は、逆に他の航空会社に対して人的な面で、競争優位性を保てている、という見方ができます。それを、一つの視点として持っていただくといいかと思っています。
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貴重な時間にて文章をお読みくださり感謝しています。
ありがとうございます。
それでは、また。
浅川淑子(あさかわよしこ)
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